ルイブラスについて

 2年前の今頃、部活を引退した僕は予想もしていなかった喪失感に包まれていた。
 「♪おとなになんてなりたくない、僕らはトイザラスキッズ」とか「ネバーランドにつれてって」とか気持ちの悪い事を連発しながら、社会に出なければならない自分に全然納得がいかなくて、一方で「こんなキッパリ辞められないOBなんて一番なりたくなかった、サイテー!」とひたすら駄々をこねていた。


 それは春を迎えて就職して一層強いものになって、特に今まで住んでいた土地と違う場所にいる僕はもう振り返る事しかしていなかった。
 楽器を弾きたくて、ルイの指揮で皆と合奏したくて、たまらなかった。4年間わりと思い残す事ないほど一生懸命にやってきたのに、悲しいほどその想いは強くてわけがわからなかった。
 「もう一度やろうよ」月に一度くらいの超ハイペースで帰省を繰り返しては友達と飲むことに一生懸命になっていた中で、そんな話は自然に出てきたんだと思う。特に話が出てからは"企画会議"と称して結局"単なる飲み会"を繰り返す、そんな日々だった。


 その頃やる気でいたメンバーはせいぜい三宅と三神、ロッチくらいだったと思う。そんなペースで話が進むわけもなく、一年が過ぎていった。
 僕らは本気でやりたかったし、やる気でいた。だけど所詮は「企画倒れ部長ロッチ」「S極三神とN極贄川」「単なる三宅」である。まともにリーダーシップを取って進んでいくやつがいるわけもなく「ルイが振るなら人は集められる」「人が集まらないとルイに話をもっていけない」そんなジレンマに陥って、どうにも身動きが取れなくなっていた。


 そんなふうに僕らが完璧な烏合の衆と化して、このまま自然消滅ってパターンに入りかけていた時に、現役の演奏旅行を聴いてやる気を出した男がいた。村上ヤッシー
 認めたくはないけれど、僕らのリーダーだ。この男がやる気を出したおかげで、話はようやく流れに乗りだした。やっぱりこの男あってこそ、僕らが好き勝手に4年間振舞えたんだと再認識するほどに。


 それだけ楽しみにしていたルイブラスだけど。結局ロッチや僕は仕事の都合で出ることができなくなってしまった。もう僕の中の後ろ向きな気持ちは消えうせたし、人を集めるのは凄く大変なこと。二度目があるかどうかはわからないけれど、いつかまた僕は駄々をこねると思う。だからまたやりたいと思えるように皆には頑張ってもらって、実行委員にはその時はまた苦しんでもらいたいと思う。
 結局練習に一回も参加しないまま実行委員もパーリーも降りて、聴き手にもなれなくて、もはや僕はルイブラスの何でもないけれど、楽しみにしてます。
 集まった多くの人に感謝しつつ、この演奏会が当初の目的通り美味しいお酒が飲めるものになることを祈って。