SM

もう三年が過ぎた。
あの頃僕はすごく弱っていた。


それまでの全てだった部活を引退して、
なんとか大学を卒業して、
友達と過ごしたユルくて楽しい日々から離れて、
初めての土地に社会人として迷い込んで、
ついでになぜか禁煙を試みたりして、
おまけに概念すらなかった職種に配属されて、
まわりは「駄目な大人の見本市」で、


なんかこう、慣れないことをいっきにやろうとして、
多分自分のキャパシティーなんて余裕でオーバーしてたのに、
「俺はやれる」って思い込んで。
「若いうちの苦労は買ってでも云々」なんて強がりながら。


だから就職してから二年間近く、すごく憂鬱な日々を過ごしてた。
それも前を向いてる振りをしながら。


そうやってもがいていたら、二年経った頃からいろいろと変化が現れた。
憂鬱な気持ちでしか接していなかった仕事が徐々に楽しくなってきた。
多分僕は何かにあせってた。


決して諦めとか、妥協じゃなくて。
力を抜いて、受け入れるようになった。


そうやってここ一年間は、少しいい感じで過ごしてきた。
相変わらず仕事は苦しいけれど、楽しむ考え方を見つけた。
会社では何を間違ったか「英語ができる」という設定になって、海外出張も多くなり貴重な経験を積んでいる。



でも、ふと振り返ると。
俺が努力してたのって、苦しかった二年間で。
事態が好転してからのここ一年は手綱を緩めてることに気がついた。


苦しかった二年間、俺は必死でもがいてた。
いろいろな本を読み漁って、
英語の勉強こつこつやって、
内省と自戒を繰り返して。



今の俺はどうだろう?


社会に出て初めて気がついた「自由」の意味に戦慄し、
今までの自分を否定ようと躍起になっていたあの必死さは消えかけていやしないか?


あの苦しさは御免蒙りたいけれど、それを避けたいなら日頃の努力が必要なんだよね。
あの必死さと言うか、もがきって言うか、あの頑張りはやっぱりずっと続けるべきものなんだよね。


あぶねー、忘れそうになってた。