物欲エレジー

朝はつらい。
全く働かない頭をのせた体を起こし、味のわからないパンを口の中に押し込み、出勤の支度をする。
「低血圧=朝がつらい」という方程式が存在することを知ってからというもの、僕は免罪符のごとく低血圧が原因で朝がつらいのだと吹聴している。
高校時代にあれほど電車に乗り遅れ、遅刻を連発したのはそのせいなのだ。
大学時代にあれほど部活に遅刻したのは、そのせいなのだと。
本当はそれほど血圧が低いわけではないのだけれど、そうでもしないと説明がつかないからそういう事にしておいてほしい。


そんな僕は、遂に金にモノを言わせて朝の貴重な時間を有効活用する新兵器を導入することにした。
電気シェーバー、ラムダッシュ
間もなくパナソニックに取って代わられる、消滅寸前のナショナルブランドである。
今まで、なんとなく電気シェーバーが嫌で、髭はT字かみそりで剃る派だったが、そう好き嫌いも言っていられない。
トヨタ生産方式には「7つのムダ」と言われるものがあるが、僕もその観点から朝の動作観察をしてみた。
結果この「ヒゲ剃りのムダ」にたどり着いたわけで、8つめの発見である。
朝ヒゲを剃る時間というのは結構大きいのだ。


最近は電気シェーバーでも4枚刃のモノもあるという。
それなら、ヒゲが濃い目の僕も安心である。
驚くことに、自動で洗浄してくれるモノもあるという。
それなら、ものぐさな僕も安心である。
と、情けないほど見事に消費資本主義のマーケティング戦略に踊らされ、恐らく使わない機能のついた電気シェーバーご購入となった。
さすが社会人、さすが出張成金である。
「その程度、自分で洗えば良くない?」という疑問を黙殺するあたり、順調に判断力が低下していると言える。


早速、じょりじょりと剃ってみる。
さすが天下の松下電器、ジャパンアズナンバーワンを地で行く剃り心地である。
次は自動洗浄機を試してみる。
使い終わったシェーバーを逆さにして機械に突っ込むだけで、あとは全てやってくれる。さすが天下の(略
ただこの洗浄機、ひとしきり事を終えるまで延々2時間ほど動き続けるのだ。
それも洗浄工程ではゴポゴポと水の音、乾燥工程ではウィーンというファンの音と結構な音がでる。


ついつい嬉しくて洗浄機を作動させてしまったのが夜11時過ぎ、そこからゴポゴポ&ウィーンである。
都合2時近くまで寝れずに、翌朝に響いたことは言うまでもない。
どうやらこのシェーバー、購入層にワンルームに住むような人は想定していないようだ。
きっと家の中に洗面所が3箇所くらいある家に住む人が買うべきなのだ。
世の中は教訓に溢れている。